【半月板損傷の2つの手術方法】入院や運動が出来るようになるのかについて
【半月板損傷の2つの手術方法】入院や運動が出来るようになるのかについて
半月板損傷とは
半月板は膝関節内の、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある三日月形の軟骨組織。膝関節の内側と外側にあります。関節を滑らかに動かしたり、膝にかかる強い衝撃を和らげて骨を守る役割を担っているのです。しかし交通事故や大きな負担が加わったとき、半月板が欠けたり、変性してしまうことがあります。レントゲンでは半月板損傷を判別できないのでMRIで精査をお勧めします。
半月板損傷を治療するには保存療法と手術療法の二種類。
では、どういった方が手術療法を受けるべきなのでしょうか。
半月板損傷の治療法
半月板が損傷しているからと言って、全ての人に手術が必要というわけではありません。まずは保存療法が基本。診断が半月板損傷のみだと保険適応外となることもありますが、ヒアルロン酸注射などもひとつの保存的治療です。
ただ、保存療法を続けても症状が良くならないことがあるでしょう。痛みが長期的に続くと、日常生活にまで支障が出てしまいます。また、強い症状を放置することで変形性膝関節症を引き起こす可能性も……。
そういったケースでは手術という選択肢も出てきます。またロッキング現象(欠けた半月板が膝関節に挟まり、膝が曲がらなくなる症状)が出ている場合にも手術の適応が考えられます。
半月板損傷のための手術
半月板損傷のための手術には、半月板切除術と半月板縫合術の2種類があります。どちらも関節鏡(内視鏡)を用いた手術方法です。
まず膝に2、3カ所の小さな穴を開けます(3mmほど)。そこから細い関節鏡や手術器具を挿入(関節鏡の直径は4mmほど)。関節鏡には棒状の高性能カメラが付いており、モニターを通して手術を行っていくのです。膝を切開する部分が小さいため、身体にあまり負担がかかりません。
手術は全身麻酔・脊椎麻酔(腰椎麻酔)のどちらでも行われます。脊椎麻酔の場合、医師と一緒にモニターを見ながら手術が可能です。手術に対して恐怖がある方は、全身麻酔で眠っている間に行うことができるので安心してください。
2種類の手術の違い。また、それぞれがどういった症状に適応しているのか。そして、入院期間やスポーツ復帰までの期間を見ていきましょう。
半月板切除術・・・損傷した半月板を切り取る手術
適応になる方
断裂が小さい場合や半月板が変性してしまっている場合に行います。また、膝の内側の半月板が損傷したときはこの手術が選択されることが多いようです。その理由には血流の乏しさにあります。
血液は人間の自然治癒力の源。血液の流れが十分ある箇所はケガをしても治りやすいと言えます。半月板の血行は外側の30%に存在し、内側にはほとんどありません。つまり膝の内側は外側と比べて血流が悪く、損傷した場合、修復する見込みがないのです。結果、半月板を温存する治療法より、切除した方が効果的という判断が一般的と考えられます。
半月板切除術の方法
損傷した半月板を、健常な半月板から切り取ります。半月板が損傷している箇所を切り取り、つまんで取り除きます。
この治療法の優れたところは、半月板の損傷部位のみを切除するため、健常部分は温存することができる点にあります。デメリットとしては切除した部分は再生しないため、関節軟骨にかかる負担が大きくなります。膝周辺の筋肉強化など運動療法を行い、膝にかかる負担を軽減させる必要があるでしょう。
半月板切除術の入院期間
入院期間は3日ほど。早ければ手術の翌日に退院が可能です。術後の翌日から歩行が可能となります。
半月板切除術後から仕事復帰まで
松葉杖をついての歩行を継続し、1〜2週間で日常生活に支障がないくらいに回復します。学校や仕事場への復帰は同時期に可能でしょう。しかし、仕事内容によっては術後から、1ヵ月(軽作業)、3ヶ月(重労働)かかると思われます。
半月板切除術後からスポーツ復帰まで
スポーツへの復帰は、切除した半月板が内側か外側かで異なります。外側の半月板を切除することで、膝関節への負荷はより大きくなり、復帰に時間がかかると言われているのです。競技にもよりますが、内側切除であれば1〜3ヶ月ほど。外側であれば2〜4ヶ月ほどでしょう。
半月板縫合術・・・損傷した半月板を縫い合わせる手術
適応になる方
以前は切除術が主流でしたが、より半月板を温存できる縫合術が行われることも多くなってきました。
この手術の適応条件として、損傷した箇所が血行の良い部位(主に外側の半月板)であること。血流が保たれていれば再生が期待でき、縫合術が有効なのです。そして、半月板に変性がないことがあげられます。
また、若い方や膝の活動性が高い方は、半月板機能の温存がより重要となるため、半月板縫合術を選択すべきとされています。
半月板縫合術の方法
縫合術には以下の3種類のやり方があります。
メリットとしては、半月板の機能が損なわれないこと。断裂部が癒合すれば元の半月板と同様な機能が期待できます。そのため、変形性膝関節症になるリスクも減らすことができるのです。
デメリットは再断裂の可能性があること。再断裂した際は、新たに手術が必要になります(半月板縫合術の再手術率は22.4%、部分切除術は4.0%)。
- Inside-out法
最も一般的な方法です。膝関節の中から針と糸を通し、関節の外に出してから縫合するやり方です。関節の外に出す際に皮膚を切開する必要がありますが、広い範囲に糸を通すことができる利点があります。
- Outside-in法
Inside-out法とは逆に、関節外から針を刺して関節内で縫合するやり方です。
- All-inside法
皮膚切開を行わずに関節内の中だけで半月板を縫合する方法です。主に断裂の長さが1~2cmまでの損傷に選択されます。
半月板縫合術の入院期間
半月板が癒合するまでに時間がかかるため、入院期間やリハビリ期間も長期に渡ります。入院は約2週間。修復した箇所に負荷をかけないために、術後2〜3週間は松葉杖を使っての歩行が好ましいでしょう。
半月板縫合術後の仕事復帰
仕事内容によりますが、デスクワークなどの膝に負担がかからない内容であれば1ヶ月。少しでも負荷がかかるようであれば3ヶ月が目安になります。
半月板縫合術後のスポーツ復帰
スポーツ復帰には4~6ヵ月がかかり、その間リハビリは継続する必要があります。まずはジョギングやスクワットなどの軽い運動を行い、膝の様子を見ましょう。痛みや腫れが現れなければ、徐々に負荷をかけていくと良いでしょう。
半月板損傷の手術の選択は、半月板の損傷具合や位置、年齢によって変わってきます。自分の症状にあったものをしっかり選択しましょう。
整形外科を受診して骨には異常ないと言われた…でも膝が痛い!という場合に半月板損傷の可能性は高いです。
一度MRIを撮影し半月板に異常がないのか詳しく調べることは大切になってきますので、相談していただければと思います。